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公務員の過失による事故と、公務員の個人責任   佐藤健宗

2013/09/17

 友人の地方公務員から、質問があり、リサーチを行ったので、この際ブログにもあげておきます。

 友人の質問の趣旨は、「公務員が職務の遂行中、自分の過失で事故を起こしてしまった場合、公務員個人はどこまで責任を問われるのか」というものである。

 事例としては、公務員が職務として公用車を運転していたときに、前方不注意のため歩行者をはねて大けがをさせてしまった。このような場合、事故を起こした公務員はどのような責任を問われるかということになる。

 この場合の法的責任となると、民事責任(損害を賠償する責任)と刑事責任(自動車運転過失致傷罪)、さらには行政的責任(懲戒処分)が問題となる。

 まず民事責任(賠償責任)から。

 国家賠償法1条に次のような条文がある。「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。」今回の事例の公務員の行為は、この条文に該当するので、今回の公務員が所属する地方公共団体が賠償責任を負うことは間違いない。

 では地方公共団体とならんで、公務員個人も賠償責任を負うか?この問題について国賠法は何も決められていない。そこで裁判所の判断によることになる。この論点については、有名な最高裁の判例があり、結論は既に出ている。結論は、個人責任は負わない。最高裁によると、「公務員の職務行為に基づく損害については、国又は公共団体が賠償の責に任じ、職務の執行に当たった公務員は、行政機関としての地位においても、個人としても、被害者に対しその責任を負担するものではない。」(最高裁昭和30年4月19日判決)

 ところが国家賠償1条2項に、「公務員に故意または重過失があった場合に限り、国または公共団体は、その公務員に対し求償権を有する」とある。これはどういう場面のどういう条文なのだろか。

 これは被害を受けた市民から当該公務員への直接の賠償請求を認めた条文ではない。そうではなくて、国又は公共団体が市民(事故の被害者)に賠償を行った後に、当該行員に求償(国等が払った損害金を公務員に請求)できるということを定めたものである。

 しかし何でもかんでも求償できるというものではない。条文にも「故意又は重大な過失があった場合」とされている。この重大な過失とは、「通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすればたやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに、漫然とこれを見過ごしたような、ほとんど故意に近い、著しい注意欠如の状態(昭和32年7月9日最高裁)」をいうとされている。

 今回の事例では、単なる前方不注視なので、到底重大な過失はいえないだろう。筆者は、このブログをあげるにあたって、国等から当該公務員に求償を認めた実例がどの程度あるか調べてみたが、時間的な制約はあるが、ざっと見た限りでは見あたらなかった。おそらく公務員に求償することは、ほとんど過去に実例はないと思われる。

 以上から、民事的責任としては、公務員個人が賠償責任を負うことは通常はないというのが結論である。

 

 次に刑事責任。今回の事例では、前方不注視野で事故を起こしているので、過失があるといえるだろう。従って自動車運転過失致傷罪が成立する可能性が高いといえる。これは刑法が、組織の過失ではなく、あくまで個人の刑事責任を問うことを大原則としていることから来る帰結である。刑事責任の内容や軽重だが、過失の内容、被害の軽重、前科前歴など諸般の事情を総合的に斟酌して決められる。事例のとおりであれば、おそらく罰金か執行猶予付の有罪判決がでるだろう。この責任については、公務員であってもなかっても、公務執行中かそれ以外であっても、責任はかわらないので、公務員だから心配になるという性質の問題ではない。

 

 最後に行政責任だが、自動車運転過失致傷罪が成立する場合、何らかの懲戒処分を受ける可能性は高い。しかしどのような内容の懲戒になるかは、やはり過失の内容や被害の状況などによるだろう。

 

 以上、公務員が事故を起こした場合の、個人責任についてまとめてみました。公務員の皆さん、参考になりましたか?

弁護士 佐藤健宗(兵庫県弁護士会明石支部)

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